家の買い替えと税金(譲渡損失の繰越控除)
2020年9月7日
マイホームの買い替えを考えていらっしゃる方の場合、不動産会社に依頼して売却価格を査定してもらった際に、「買った時より随分値下がりした!」ということもあるでしょう。
どうにか損失を埋められないものでしょうか?
この損失を税金で還元する制度があるのをご存知でしょうか?
「買い替え時の譲渡損失の繰越控除(マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」です。
一定の要件を満たせば、譲渡損失を同年の給与所得や事業所得などの他の所得から控除(損益通算)することができるのです。
その年に控除しきれない譲渡損失はトータルで4年、翌年以降最長3年繰越控除が出来るようになっています。
これも、買い替えの方の資金計画には外せない項目ですね!今回はこの特例についてご紹介していきます。
買い替え時の譲渡損失の繰越控除を受けるためには?
この特例を受けるにはいくつかクリアしなければならない項目があります。
主な要件を下記のリストに挙げてみます。
【売却する住宅の要件】/買い替え時の譲渡損失の繰越控除
● 自身が居住するマイホームを売却すること
(これまで住んでいたマイホームの場合、退去日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること)
● 日本国内の家屋で、売却の年の1月1日における所有期間が5年超であること
● 売却予定の敷地面積が500㎡以内(超えた場合は超えた部分が適用除外)
● 住んでいた、または住んでいる家屋の買主が売主の親子・夫婦など特別の関係ではないこと ※1
● 住んでいた家屋を取り壊した場合:下記のa、b、cの全てを満たすこと
・a:上記該当の家屋・敷地は、取り壊しの年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えること
・b:取り壊した敷地の譲渡契約を建物の取り壊し日から1年以内に締結し、退去日から3年経過した年の12月31日までに売却すること
・C:家屋の取り壊しから譲渡契約の締結日まで敷地を駐車場の賃貸などその他の用途で使用していないこと
【購入する住宅の要件】/買い替え時の譲渡損失の繰越控除
● 売却の年の前年1月1日~売却の年の翌年12月31日までに国内の床面積50㎡以上の住宅を取得すること
● 新居宅を取得した年の翌年12月31日までに居住すること(または居住見込みであること)
● 新たな住宅を取得した年の12月31日時点で返済期間10年以上のローンを組んでいること
【その他の要件】/買い替え時の譲渡損失の繰越控除
● 合計所得金額が3,000万円以内(3,000万円を超える年があるときはその年は適用除外)
● 売却の年の前年及び前々年に、居住用財産に関する他の特例を受けていないこと
● 売却の年の前年以前3年内に当制度を利用していないこと
※その他…災害で滅失した家屋を所有している場合において、売却の年の1月1日時点で所有期間が5年超の敷地は、その敷地を災害の日から3年経過した年の12月31日までに売却すること。
(既に退去した家が災害で滅失した場合は退去日から3年経過した年の12月31日までに売却)
※1…特別の関係とは生計を同じくする親族や、家屋の売却後に売った家屋で同居する親族、内縁関係者、特殊関係にある法人など。
詳細は国税庁ホームページを参照
No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
お問合せはコチラ
住宅購入についてお問合せやご相談を受け付けております。
繰越控除、控除されるのはどれくらい?
例えば、これまで住んでいた住宅を売却し1,800万円の損失が出たと仮定します。年間所得500万円で返済期間15年の住宅ローンを2,500万円借り、新しいマイホームを購入しました。
この場合、
①売却した年
500万円(年間所得額)ー 1,800万円(譲渡損失額) = △1,300万円(年間所得赤字)
②売却後2年目
500万円ー1,300万円=△800万円(年間所得赤字)
…この年は所得税・住民税が非課税。所得税が全額還付。
③売却後3年目
500万円ー800万円=△300万円(年間所得赤字)
…この年は所得税・住民税が非課税。所得税が全額還付。
④売却後3年目
500万円ー300万円=200万円(年間所得黒字)
…この年は控除額を差し引いた所得額に対して所得税・住民税が課税。
以上のようにマイホームの買い替え時、売却で損失を被った際にも利用できる控除があります。
売却の期限には十分に注意して利用しましょう。
そのほか、買い替えを伴わず売却のみの損失でも利用できる「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」もあります。
詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
併用できない特例
「マイホームの買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」は以下の特例を、住宅売却の年の前年と前々年に利用していると適用が出来ないことになっています。
①「3,000万円の特別控除」
②「所得期間10年超の場合の軽減税率の特例」
以前に
③「特定のマイホーム買い替え特例」
さらに上記で述べたように、売却した年の3年前以前に
・別の自宅で買い替え時の譲渡損失の繰越控除特例を使用した場合
・特定住居財産の譲渡損失の繰越控除の特例を受けている場合
も適用外となりますので注意してください。
マイホーム買換えにまつわるその他の特例
■3,000万円の特別控除の特例
マイホームを売却した際、売却の利益が3,000万円まで非課税になる特例です。
例えば売却の利益が5,000万円の場合、3,000万円まで非課税、残り2,000万円が課税対象です。
節税額がとても大きな特例ですが、昨今3,000万円の利益が出ることは珍しいかもしれません。
特例の要件は以下をご覧ください。
■マイホームを売ったときの軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した際に使用できる特例です。「10年超所有軽減税率の特例」「長期譲渡所得の軽減税率」とも呼ばれます。
こちらも売却利益が大きいほどお得になる特例です。
【軽減税率】
・課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下の部分…14%(所得税10%+住民税4%)/(通常20.315%)
・課税長期譲渡所得金額が6,000万円超の部分…20%(所得税15%+住民税5%)
さらに、3,000万円の特別控除と併用可能です。
■特定の居住用財産の買換えの特例(2021年12月31日まで)
マイホームの買換えにあたって、売却した自宅に利益が出た場合、一定の要件のもと利益に対する課税を先送りできる特例です。
こちらは非課税になるわけではなく、新しいマイホームを将来売却したときにまとめて課税されます。
適用の要件が他より多項目ですので、利用の際はしっかりチェックしてみて下さい。
住宅ローン控除と併用はできるの?
しかし、住宅ローン控除を利用するには課税対象となる所得が必要ですので、譲渡損失の繰越控除で所得がゼロになった年には住宅ローン控除は適用外となります。
その他、上記にあげた「3,000万円の特別控除」「買換え特例」「所得期間10年超の場合の軽減税率の特例」は前後2年間、他の特例と併用できません。
以下に併用の一覧を載せておきますのでご活用ください。
特例の併用一覧
特例の種類 | 併用可能な特例 |
---|---|
A:3,000万円の特別控除の特例 | B:マイホームを売ったときの軽減税率の特例 |
B:マイホームを売ったときの軽減税率の特例 | A:3,000万円の特別控除の特例 |
C:特定の居住用財産の買換えの特例 | A:3,000万円の特別控除の特例 |
D:マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | E:住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除) |
E:住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除) | D:マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 |
特例を適用するには
これらの特例を適用するためには、確定申告をする必要があります。
■売却の翌年2月16日~3月15日頃までに書類を税務署に提出
①3,000万円の特別控除の特例
②マイホームを売ったときの軽減税率の特例
③特定の居住用財産の買換えの特例(課税の繰り延べのために)
④マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(繰越控除を受ける年にも)
No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
■新住宅の購入の翌年に確定申告
①住宅ローン控除(2年目以降は勤務先の年末調整で手続きOK)
また、ご自身のケースでどの特例を利用するのが一番マッチしているかなど具体的な税務相談の窓口は税理士になります。
いくつか利用候補がある場合には、税理士もしくは税務署に問い合わせてみると良いでしょう。
お問合せはコチラ
住宅購入についてお問合せやご相談を受け付けております。
物件情報を探す!
新築・中古住宅、マンション、土地情報を探せます。