低炭素住宅

低炭素住宅1

2020年9月9日

2012年12月に二酸化炭素(CO2)の削減の一環として「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」に基づき開始された制度が『低炭素建物新築等計画の認定制度(低炭素建物認定制度)』です。

 

エコ住宅という点では『長期優良住宅』と似ていますが、審査項目の多い『長期優良住宅』よりも取り入れやすく、なおかつ税制面での優遇が受けられるとあって、この制度を取り入れる戸建は増加しています。

低炭素住宅の基準は?

低炭素建物の基準イメージは

 

①省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量がマイナス10%以上となること

②その他の低炭素化に資する措置が講じられていること

 

となっています。

①の具体的な項目としては下記の通りです。

低炭素建物認定の定量的評価項目(必須項目)

  • ● 常時換気システム

  • ● 南窓の軒にひさし

  • ● 東西窓の日除け

  • ● 窓は複層ガラス (可能なら断熱サッシ)

  • ● 暖冷房はエアコン

  • ● 床断熱 100㎜

  • ● 連続する防湿気密層

  • ● 外壁断熱 100㎜

  • ● 天井断熱 180㎜

  • ● 太陽光発電パネル

  • ● 高効率給湯器(例:エコキュート)

これらの項目と、プラスして『省エネルギー性に関する基準では考慮されない、低炭素化に資する措置等のうち、一定以上を講じていること』の指針があげられています。

 

「低炭素化に資する措置」として

 

○HEMS(ヘムス)の導入 ※

ホームエネルギーマネージメントシステムの略。

エネルギー使用量の「見える化」などにより居住者の低炭素化に資する行動を促進する取組を行っている。

 

※…「HEMS(ヘムス)」とは、住宅のエネルギーを消費者自らが把握し、管理するためのシステム。太陽光発電により作られたエネルギーや、蓄電池により蓄えられたエネルギーが何ワットか?エアコンとリビングの照明に何ワット消費しているかなどが数値で把握できるシステム。アプリを導入し、タブレット端末などで確認、電気機器の操作が出来るものもある。

 

○節水対策

節水型機器の採用や雨水の利用など節水に資する取組を行っている。

 

○木材の利用

木材などの低炭素化に資する材料を利用している。

○ヒートアイランド対策

敷地や屋上、壁面の緑化などヒートアイランド抑制に効果的な木材などの低炭素化に資する材料を利用している。

 

これらの具体的な対策として、以下に選択項目8項目記載されています。必須項目(定量的評価項目)にプラスして、この8項目のうちの2項目以上が該当しているかもしくは『標準的な建築物と比べて、低炭素化に資する建築物として所管行政庁が認めるもの』が条件となっています。

低炭素住宅2
選択項目8項目
  • ①節水機器の設置

    (節水トイレ・節水水栓【システムキッチン用、システムバス・ユニットバス用、洗面化粧台用】・ビルトイン食器洗い乾燥機のいずれか)

  • ②雨水・井水・雑排水の利用

    (雨水貯留タンクなど)

  • ③HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)もしくはBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の設置

    (スマートHEMSなど)

  • ④再生可能エネルギーと定置型蓄電池

    (太陽光発電・蓄電プログラムなど)

  • ⑤ヒートアイランド対策

    (敷地緑化・敷地の⾼反射性舗装・屋上緑化・壁⾯緑化など)

  • ⑥住宅劣化低減措置

  • ⑦木造住宅である

  • ⑧高炉セメント、フライアッシュセメントなどの使用 ※1

※1…高炉セメントは配合された高炉スラグ微粉末の潜在水硬性により、長期強度発現性や化学抵抗性に優れたコンクリート。フライアッシュセメントは微細な石炭灰のフライアッシュを混合材として使用した、乾燥収縮が小さく、長期強度性や化学抵抗性に優れたコンクリート。

 

低炭素住宅のメリット

低炭素住宅3

低炭素住宅のメリットは人体や環境に優しく、光熱費が割安になることです。断熱性能が向上すると、部屋間の温度差が低くなりヒートショック(急激な寒暖差が引き起こす人体への悪影響)も防ぎますので高齢者にも適した環境になります。

 

また、住宅劣化措置が講じられれば住宅の寿命も長くなり価値が高まるほか、不要な建て直しやリフォームも減り地球環境にも優しいのです。

 

そのほか、長期優良住宅と同じように税制面の減税や金利の優遇が受けられます。

優遇制度の一覧をチェックしてみましょう。

低炭素住宅の優遇措置(比較)

不動産取得税  (新築) 低炭素住宅:1,200万円控除 (長期優良住宅:1,300万円控除)(一般住宅:1,200万円控除) ※①
登録免許税    (所有権保存登記/新築) 低炭素住宅:0.1% (長期優良住宅:0.1%)(一般住宅:0.15%) ※①
登録免許税    (所有権移転登記/中古住宅) 低炭素住宅:0.1% (長期優良住宅/マンション:0.1%)(一般住宅:0.3%) ※①
固定資産税    新築の減額特例 (税額が1/2になる)の適用期間 低炭素住宅:3年/戸建、5年/マンション (長期優良住宅:5年/戸建、7年/マンション)(一般住宅:3年/戸建、5年/マンション)※①
所得税控除    投資型減税※③ 低炭素住宅:長期優良住宅:10%(上限650万円) (長期優良住宅:10%(上限650万円))(一般住宅:なし)※②
住宅ローン控除の 対象ローン限度額 低炭素住宅:5,000万円 (長期優良住宅:5,000万円)(一般住宅4,000万円) ※②
フラット35S※④ 低炭素住宅:フラット35S金利Aプラン (長期優良住宅:フラット35S金利Aプラン)(一般住宅:フラット35)

※①…2022年3月31日までの入居分

※②…2021年12月31日までの入居分

※③…投資型減税とは通常10年以上のローンを組まなければ減税対象外だが、住宅ローンを組まなくても所得税の減税が受けられる制度。住宅ローン控除との併用は不可。

※④…フラット35は民間金融機関と住宅金融支援機構が提携し提供している全期間固定金利型の住宅ローンのこと。

詳しくはコンテンツ「住宅ローンにはどんな種類がある?」の【全期間固定型金利の代表的なローン】の欄を参照ください。

 

メリット①登録免許税の減税(2022年3月31日までの取得分)

■所有権保存登記

・新築住宅:低炭素住宅 0.1%  (長期優良住宅  0.1% 一般住宅 0.15%)

・中古住宅:低炭素住宅 0.1%  (長期優良住宅の固定資産税優遇期間の延長  0.2%/戸建、 0.1%/マンション) (一般住宅  0.3%)

 

メリット②所得税控除 投資型減税(2021年12月31日までの入居分)

低炭素住宅を新築すると、性能強化費用として支出した額の約10%分が所得税から控除され、控除の限度額は650万円までです。

性能強化費用(掛かり増し費用)=住宅の床面積×43,800円/㎡

 

■控除額=(掛かり増し費用(㎡)× 床面積(㎡) × 10%

 

で算出できます。

控除額の計算方法は以下です。

(その年の所得税で控除額しきれない場合は、翌年の所得税に繰越可能です。)

ローンを組まずに現金一括購入した方も利用できますが住宅ローン減税と併用ができません。

 

メリット③住宅ローン控除(2021年12月31日までの入居分)

低炭素住宅の場合、一般の住宅に比べて、住宅ローン控除(10年間)の最大控除額が100万円アップします。

長期優良住宅と同じく、借入額4,000万円以下では一般住宅と差が無いため、恩恵の効果は4,000万円以上借入れないと実感できません。

メリット④住宅ローンの金利の優遇(フラット35S)

フラット35Sの「金利Aプラン」を利用できる:当初10年間を年0.25%引き下げ (フラット35の基準金利より優遇)※1

 

※1…フラット35は民間金融機関と住宅金融支援機構が提携し提供している全期間固定金利型の住宅ローンのこと。

詳しくはコンテンツ「住宅ローンにはどんな種類がある?」の【全期間固定型金利の代表的なローン】の欄を参照ください。

低炭素住宅4

低炭素住宅のデメリット

では低炭素住宅のデメリットはどうでしょうか?

 

①時間と手間がかかる

これは長期優良住宅と同じく、認定基準に合わせて建設しますので工期がかかります。

申請の手間や設備導入に費用もかかります。

 

②入居後のメンテナンス

設備を多く設置すると、それだけ維持管理にメンテナンスとその費用がかかります。

③優遇措置が期間限定

税制面の優遇措置も永続的ではないため、減税面では大きな期待をしすぎず、質の良い生活が送れることや物件的価値、社会環境に貢献できるという本来の目的を重視することが大切です。

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